ねんどうな人たち。インタビュー

想像を超えた粘道をインキュベートする

手塚 純子 さん

株式会社WaCreation 代表取締役社長 machimin オーナー 1983年大阪生まれ。神戸大学経営学部卒業後、株式会社リクルートに入社し、営業・人事・企画を経験。ビジョン策定浸透・採用・人材育成などの分野でプロデュースを強みとする2児の母。第二子の育休中に起業。コミュニティスペースmachiminを4拠点運営。2017年6月より流山市子ども・子育て会議委員、2019年4月より国立大学法人千葉大学非常勤講師、2020年4月より千葉県立特別支援学校流山高等学園学校運営協議会委員。

千葉県流山市在住の合同会社粘道代表の大野は、地域との繋がりを重視し、同市内のコミュニティスペース「machimin」で定期的に粘土あそびのワークショップを開催しています。「machimin」オーナーである手塚純子さんは、自身を“株式会社流山市人事部長”と捉えて活動し、様々な市民を繋ぐことでまちづくりを企てている仕掛人。そこで、大野との出会いや粘道の活動についての思いを伺ってみました。

アメフト部での活動や組織ビジョン策定経験が土台に

――まず、手塚さんのご経歴をお話しください。

手塚 学生時代に、体育会アメリカンフットボール部のマネージャーを務めました。そこで、アメフトというスポーツは、選手のポジションごとに役割分担が決められて戦略的にチームプレイが行われているだけでなく、ケガで試合に出られない選手も試合のアナライジングに加わったり、ベースの組織づくりをマネージャーとして行なったり、様々な役割があることを知りました。そこから組織マネジメントが面白くなり、チーム強化のために選手のリクルーティングにも乗り出したんです。こうして組織人事への関心が深まり、就職活動の時期を迎えてリクルートを志望し、入社しました。

情報誌の営業部門に配属され、自分一人が業績を上げてもほかのメンバーが目標達成できなければ事業部全体の目標達成ができないところから、人のモチベーションについて考えるようになりました。そんな3年目の頃に事業部門の人事業務にシフトしてもらい、複数の組織を一つにまとめるビジョン策定や浸透策、新人教育にも取り組み、成果に繋がっていると感じることができました。この、アメフト部での活動やビジョン策定・浸透の経験が、今の自分の土台になっていると思います。

自身を“株式会社流山市人事部長”を捉える

――machiminを始められた経緯とは?

手塚 会社員の7年目に結婚の目途が立ち、住まいを探した時に「母になるなら流山市」というキャッチコピーに引かれ、ここで暮らすことにしました。その頃から、流山市を会社に見立てて、自分が人事部長になるとしたらどう動くかと妄想するようになったのです。リクルート時代に培った営業魂を発揮し、街頭にいた市長に自己紹介までしました。市長は“株式会社流山市の社長”だから、挨拶しておかなければと。市長は(おそらく)ドン引きしながら「頑張ってください」と言ってくれました(笑)。

 それまで私は都内企業で優秀な人に囲まれて仕事をしてきたわけですが、地域には平日の昼間に地域で過ごしている多様な人たちがいることを知りました。この人たちは、何かやってみたいことがあってもいろいろな理由で活動する、または働くことを諦めざるを得なかったり、忘れたふりをして遣り過ごしていることが多いのではないかと感じました。「やりたい」のならば、やればいい。機会が「ない」なら、今できる形の活動や事業を「創ったらいい」し、そのために必要な自分に足りない力を貸してくれる人を見つければいいと思うわけです。それが、“株式会社流山市人事部長”の活動コンセプトになりました。そして、「“壁”を壊して、輪を創る。創りたい未来を、身近なところから。自分とみんなで、創っていく。」というミッションと、「ないなら創る。ほしいなら創る。あるもの活かす。みんなでやる。これらを楽しく浸透させていくこと」という価値観を掲げて、2018年1月に株式会社WaCreationを設立しました。事業内容は人材育成を軸としたコミュニティデザインで、流山鉄道の流山駅に隣接しているコミュニティスペース「machimin」はその拠点です。

想像を超える存在

――私(大野)は市内のサテライトオフィスを活動拠点にしていて、そこでの活動を見た人が手塚さんに私を紹介くださったようです。手塚さんも粘道の話を聞いて興味を持ってくださって。

手塚 こういったコミュニティ活動をしているのは、9割以上が女性なんです。大抵は育児や教育や介護、趣味、エコといったことが活動のテーマのものが多く、儲けるのには向いていなくて、「男性が仕事として取り組む」という概念はなかったように思いますね。ところが、大野さんはアメフトの日本一になったチームの元選手というごつい体格の男性で、一家の大黒柱で子持ち、しかも手先を細かく使う粘土あそびをテーマに、1回1人1,500円という料金で実に楽しそうにワークショップをやっている、と。普通、興味を持ちますよね(笑)。

――そうですね(笑)

手塚 私の想像を超える存在でした。それで、紹介してもらってお会いすると、大野さんは粘土あそびを通じて子どもの創造性を養ったり、介護や企業の人材採用や育成にまでアプローチしたり、ビジネスに繋げようとしたりしていると知りました。しかも、地域との繋がりを重視し、いずれ市内に固定の活動スタジオを設けたいといったビジョンもお持ちだった。まさしくmachiminのコンセプトに符合していたわけです。machiminのコンテンツは「人そのもの」ですから、こんな異形の存在にはぜひmachiminに加わってほしいと思ったのです。

粘道がグツグツと発酵していく

――私もここでワークショップができればいいなと思っていたので、ありがたかったです。実際に粘道の活動を見て、どう思われましたか?

手塚 大野さんの本業は人事コンサルタントで、実際はそちらが収入源になっていますね。そういうこともあってか、大野さんは粘道に関してはビジネスとしてのロジックを組み立ててやっているのではなく、アート思考を取り入れる日としての活動されているのかな、と見ています。だからこそなのですが、想像もしない展開や、新しいものが生まれそうな予感がしています。面白いものは、得てして論理がないところから生まれるからです。また、粘道の活動からは、金銭ではない精神的な報酬が得られているのだろうかとも見ています。

――自分としては、人事コンサルの仕事と粘道の活動の整理ができておらず、模索を続けているという感じなのですが。

手塚 machiminでの粘土あそびワークショップの告知を見て来る人もいるし、たまたま前を通りかかって興味を持って入ってくる人もいます。ここで普段なら出会わなかったであろういろいろな人と出会い、触発される可能性があると思っています。別の活動とのコラボレーションとか、他業態との協業とか。実際にほぼはじめましての方と飲み会に発展したこともありましたよね(笑)粘道がグツグツと発酵していくイメージがありますね。

粘道の事業構造をよりよいものに

――確かに、いろいろな人がワークショップに参加してくれるようになり、少し幅が広がった気がします。

手塚 machiminは「生活リサーチセンター」とか「官民共同プラットフォーム」とか「制度の狭間のサービス」とか「未来型ティール組織」とか、いろいろな言い方をする人がいます。私は「まちの人材活性化ショールーム」と思っていますが、それぞれの人にとっていろいろな機能や意義があればいいと思っています。大野さんにとっては、「インキュベーション拠点」という側面もあるといってもらって‥恐縮です。ですから、今後も定期的にここでワークショップ等を開催して、テストマーケティングやコラボレーションを通じて、粘道の事業構造をよりよいものにしていくお手伝いができればと思っています。もし大野さんがビジネスとして人事コンサルと粘道を逆転させたいと考えるのならば、良質なアクシデントが必要だと思います。出たとこ勝負で、いろいろ動いていきたいですね。

――ありがとうございます。

手塚 純子 Junko Teduka

株式会社WaCreation 代表取締役社長 machimin オーナー
1983年大阪生まれ。神戸大学経営学部卒業後、株式会社リクルートに入社し、営業・人事・企画を経験。ビジョン策定浸透・採用・人材育成などの分野でプロデュースを強みとする2児の母。第二子の育休中に起業。コミュニティスペースmachiminを4拠点運営。2017年6月より流山市子ども・子育て会議委員、2019年4月より国立大学法人千葉大学非常勤講師、2020年4月より千葉県立特別支援学校流山高等学園学校運営協議会委員。

株式会社WaCreation Webサイト
https://wacreation.com/machimin/