ねんどうな人たち。インタビュー

粘土を原料に、肌や口にうれしい 洗顔料と歯磨きペーストを開発

代表取締役 手塚 平

大学卒業後、家業の経営する株式会社粘土科学研究所に入社し、洗顔料や歯磨きペーストなどの開発や生産に関わる。2013年に3代目社長に就任するとともに、販売会社の株式会社KURUMUと自社ブランド「KURUMU」を立ち上げる。

粘土を精製してつくる「モンモリロナイト」を主成分とした洗顔料やハンドクリーム、歯磨きペーストがあります。洗顔料は、主成分の働きで汚れをしっかり落としながらもうるおいを届けて閉じ込めるという働きが人気の的。粘道としては、粘土のそんな力や可能性について知りたくなりました。そこで、東京都江戸川区の葛西駅近くに本社を構える株式会社KURUMUに伺い、若き3代目社長の手塚平さんにお話しをうかがいました。

クレオパトラも愛用

――まず、御社の概要からお教えください。

手塚 現在は、「KURUMU」ブランドの洗顔料とハンドリーム、歯磨きペーストを製造販売しています。商品の最大の特徴は、主原料が「モンモリロナイト」という粘土に含まれる成分であることです。モンモリロナイトは、6500万年前に火山が噴火した際に降り積もった火山灰が海底に沈み、海水のミネラルと混ざって蓄積されてできたと言われています。

モンモリロナイトは世界中で取れます。ヨーロッパ産は硬水を含むカルシウムタイプですが、それに対して国産のものは軟水を含むナトリウムタイプ。保水力が全く違います。新潟県や山形県などで良質なものが取れ、当社もそこのモンモリロナイトを使用しています。

モンモリロナイト自体は直径1ナノメートル×100ナノメートルほどのミクロな粒子です(1ナノメートルは100万分の1ミリ)。鉱物にも関わらず、水を大量に含んで膨らむという特徴があります。これを人類は大昔から活用し、あのクレオパトラが化粧品として使っていたり、羊飼いが羊の毛の脂を洗うのに使っていたという伝承がいくつもあります。

当社は、このモンモリロナイトを50年以上に渡って研究するとともに、これを原料として洗顔料などを製造販売してきました。

――モンモリロナイトを原料にすることで、どういった効能が発揮されるのですか?

手塚 モンモリロナイトは常にマイナスイオンを帯びているので、通常はプラスイオンを帯びている汚れを磁石のように吸い取ってくれます。また、ヒアルロン酸やコラーゲンといった保湿効果のある副原料を汚れの代わりに肌にしっかり届ける機能もあります。さらに、モンモリロナイトには被膜作用があるので、届けたうるおいをバリアのように包んで閉じ込める働きまであるのです。ですから、「KURUMU」の洗顔料を使うと、汚れをしっかり落としながらうるおいを残した洗い上がりを実感いただけます。

歯磨きペーストの場合は、研磨剤を加えなくても汚れをしっかり吸着するので、歯や歯茎を傷つけることなくツルツルに磨くことができます。

ダマにならないようつくるのに手間暇

――肌トラブルに悩んでいる人にとっても有効なのですか?

手塚 もちろん、肌に合う、合わないは人それぞれですので一概には言えませんが、界面活性剤は使っていないといったことから、肌トラブルが改善したというユーザーの声は数多く届きます。スターターキットなどの商品は弊社のECサイトで販売していますので、まずは試していただければと思います。

――モンモリロナイト製はとても良さそうに思えますが、市場ではあまり聞きませんね。類似製品はあるのでしょうか?

手塚 ありますが、それも当社のOEMです(笑)。ほかにないのは、製造が難しいからだと思います。通常、こうした製品は500キログラムから1トンの釜に原料を入れ、ふたをして撹拌してつくります。しかし、モンモリロナイトは非常にダマになりやすいんです。ですから当社では60キログラムの釜に入れ、ふたをせず手でダマを潰しながら撹拌してつくります。また、防腐剤を使っているのですが 、その効力もモンモリロナイトが包み込んでしまうので、その量のバランスが難しいのです。

創業者は“街の科学者”

――なるほど。手間暇かけているんですね。では、KURUMUさんのルーツをうかがいたいと思います。そもそものスタートはいつだったのでしょうか?

手塚 そもそもは私の祖父が40年ほど前に創業しました。祖父は“街の科学者”を自称していて、何度も会社をつくっては潰し、を繰り返したそうです。それだけ好奇心が旺盛だったのでしょう。そうした中で、爆薬の研究をしていた時期がありました。ダイナマイトは山を発破する時などに使われますが、そんな関係でダイナマイトをセットする土にも研究テーマを広げたのです。そこからドロドロした粘土に関心を深めました。

そんな時に、ある人からシャンプーの開発を持ちかけられたそうです。そこで、粘土の存在がピンと来て、粘土を原料にシャンプーの開発をスタートさせました。

余談ですが、私が物心ついた時から生家の風呂場にはモンモリロナイトでつくられた洗顔料が置かれていて、私はそれで全身を洗っていたのです。市販のシャンプーや石鹸などを使った記憶はほとんどありません。

――その後、家業は順調に発展されたのでしょうか?

手塚 今ではクレイ(泥)原料の化粧品は美容にいいといったイメージが定着していると思いますが、当初は「子供の遊び道具の粘土を顔に塗るなんて」といった反応が少なくなかったようです。そういう意味では祖父や2代目経営者の母は苦労したと思います。

しかし、当社の製品のレシピは30年前からほぼ変わっていません。つまり、30年前から肌にいいという品質は確かなものだったのです。世の中に理解され浸透が進むまで、苦しくても諦めず続けてきたことが非常に大事だったということだと思います。

OEMから自社ブランドへ

――そうした中で、手塚さんは大学を卒業して家業に入られたわけですね。

手塚 はい、母親が経営する粘土科学研究所を手伝うことにしました。大学は文系で右も左もわかりませんでしたから、モンモリロナイトをさわりながらいろいろ勉強しました。すると、ほかでは得られない感触などがとても面白く、どんどんのめり込みましたね。

――「KURUMU」ブランドを立ち上げたのはどういった経緯でしたか?

手塚 創業以来、本社に自社工場を併設して、ずっと他社のOEMとして製品をつくってきました。しかし、OEM先がいつ「もうモンモリロナイトはやらない」と言われるかはわかりません。そこで、そうなったとしても自社だけでやっていけるよう、独自製品をつくろうと決めました。せっかくつくるなら、使う人がハッピーになれるような製品にしよう、そんないい製品とイメージしてもらえるようブランドづくりをしようと、「KURUMU」とネーミングしました。2013年のことです。

――3代目の社長にも就任されました。

手塚 先代の母は70歳近くになり、そろそろ潮時と判断したようです。私もちょうど30歳になったので一区切りつけ、この会社をしっかり続けさせようと思いました。

まずやったことは、レシピの整理です。ずっと家内工業としてやってきたので、レシピのノートにはおかしなメモが書かれていたり、原料名も正式だったり通称だったりがごちゃごちゃだったからです。これをつくりなおして、誰に見られても恥ずかしくないというか、きちんとしたものにしたいと考えました。

また、会社全体の運営やシステムもすべて見直しました。毎年のように、製品の梱包などでトラブルが発生するのですが、原因を究明し再発を防ごうといった機運に乏しかったのです。少人数で忙しかったからだと思いますが、私はそれが我慢できなかったのでメスを入れることにしました。製品のレシピ、法律、販売戦略のそれぞれに詳しい人をアドバイザーとして月1~2回来てチェックしてもらうようにしたのです。社員にもわからないことは聞いてもらえる体制をつくりました。これでトラブルは激減しましたね。

「モンモリロナイトは面白い」

――その後、業績はどういった状況でしょうか?

手塚 おかげさまで、ここ5年は売り上げは伸びています。従業員も5年ほど前まで社員1名とパートさんが3~4名でした。そんな時代がずっと続きましたが、現在は社員8名まで増え、パートさんは4名です。

――マーケティングとしては、どういった施策を講じているのでしょうか?

手塚 私が感じたように、「モンモリロナイトは面白い」というコンセプトで、一般の皆さんに実際にモンモリロナイトに触れていただくイベントを数多く展開しています。ハンドクリームを塗ってもらう、歯磨きしてツルツルになる体験をしてもらうのはもちろん、原料を自由にブレンドして「マイハンドクリームづくり」をしてもらったこともあります。さらに、催事会場に小さなプールを設置しお湯で溶いたモンモリロナイトを張って足湯を試してもらったり、チョコフォンデュタワーにハンドクリームを流して、おもちゃのイチゴを使って手にハンドクリームを塗ってもらったりもしました(笑)。通行人に「なにこれ⁉」と振り向いてもらうことが大事ですし、実際に感触を確かめてもらうことが一番ですから。毎回好評ですね。

――今後の事業計画やビジョンは、どういったお考えですか?

手塚 入浴剤や食器用洗剤など、用途開拓をして製品のバリエーションを増やしていきたいと思っています。洗顔料などのコアなユーザーがいますので、そういった方を中心に広めていければいいですね。

――どうもありがとうございました。

手塚 平 Taira Teduka

株式会社KURUMU代表取締役 大学卒業後、家業の経営する株式会社粘土科学研究所に入社し、洗顔料や歯磨きペーストなどの開発や生産に関わる。2013年に3代目社長に就任するとともに、販売会社の株式会社KURUMUと自社ブランド「KURUMU」を立ち上げる.。

株式会社KURUMU Webサイト
https://montmorillonite.jp

ねんどうな人たち。

なぜ人は粘土に向かうのだろうか。子どもにかぎらず、成人までもが粘土に向かうようだ。
そこには「玩具としての粘土」だけではない何かがあるに違いない。
人は何を機に粘土を手にとり、何を求めて粘土と向き合うのか。
粘土に向かう人たちを”ねんどうな人たち” と勝手に名付け紹介していきたい。