ねんどうな人たち。インタビュー

手を動かしていると夢中になれる

西寺 美幸 さん

茨城県つくば市在住。1948年生まれ。7歳の孫とともにワークショップに参加したことがきっかけで粘土遊びと出会う。粘土遊びを通じて孫とコミュニケーションできること、手を動かし夢中になることで不安が解消されることに惹かれ趣味として活動中。

専業主婦歴40年の西寺美幸さん(74歳)は、7歳のお孫さんとともに粘道の主催するワークショップに参加して以来、粘土遊びが大好きになり、自宅でもお孫さんと楽しまれています。「孫と粘土を通じてコミュニケーションできるし、手を動かしていると夢中になって不安なことも忘れられるところがいい」と言います。そんな西寺さんに、粘土遊びを始めた背景や効用について伺いました。

やったことがないことにも積極的にチャレンジを

――粘土遊びを始めるようになった経緯からお話しください。

西寺 私は1948年生まれですが、この歳になると耳が遠くなったり、目が見えにくくなったり、思ったように話せなくなったり、あれができないこれができないと体が言うことを聞かなくなるんです。それとともに情緒不安定にもなってしまって。この先何年生きられるのかはわかりませんが、先のことに希望が持てないと思うようになりました。

 そんな私を見て、近くに住む娘が孫と一緒にいろいろなところに連れ出してくれるようになりました。私が暮らすつくば市の宇宙センターに行ったり、娘の会社がオーナーを務めている流山市の“machimin”というコミュニティのスタッフと一緒に長野までリンゴ狩りに行ったり。その時は、谷のところでターザンごっこをやってみたりと(笑)、周りの若い人の歳まで降りていって楽しめたんです。それで、これまでやったことがないことにも積極的にチャレンジしてみよう、行ったことにないところに出掛けるようにしようと前向きに思うようになりました。残された時間を有意義に過ごしたい、と。

――粘土遊びもそんなことの一環だったと。

西寺 そうなんです。2022年の6月、娘が「“machimin”で粘土のワークショップがあるけど、お母さん興味があるなら孫と行く?」と誘ってくれました。実は、手を動かすことが好きで、若い頃から刺繍などいろいろやってきたんです。一男一女の子育てをしながら、家事の合間を見つけてやっていました。粘土はそんな日常の中にはなく、娘から誘われた時には子供のものという思いがありましたが、手を動かすことに引かれて行ってみることにしたんです。

「今度はもっと上手につくりたい」

――会場に行ってみて、いかがでしたか?

西寺 まず、作品見本を見せていただいて、とても引かれました。マンガチックな作品があって、こういうのがいいなぁ、って。また、先に1組の親子がやっていたので、その様子を見ていたら「自分ならこうする」って思ったんです。自分もやってみたいと。それで、最初は孫の付き添いのつもりでしたが、私の分も材料を頂いて、それぞれつくることにしたんです。でも、私には才能がないので、何もないところから何かをつくることはちょっと。そうしたら、粘道の大野さんが「ひまわりをつくりましょう」と言ってくださって。これなら私にもできるかな、と思いました。

――作品をつくってみてのご感想は?

西寺 見本はマンガチックなところが良かったのに、私は生真面目なせいなのか、本物のひまわりっぽくつくろうとしてしまって、思ったようにつくれなかったのです。それがちょっと悔しくで、「今度はもっと上手につくりたい」って思わず口に出てしまいました(笑)。

――お孫さんも楽しんでいましたか?

西寺 はい。もう「我が道を行く」という感じで、お題を無視してつくりたいものをつくっていました(笑)。家でやる時もそんな感じです。

孫はそっちのけで自らが楽しむ

――それ以来、ご自宅でもお孫さんと粘土遊びを楽しむようになったのですね。

西寺 均すと月1回ぐらいですが、一緒に楽しんでいます。それぞれ別のものをつくっていますが、私は孫の助手でもあるので、その間いろいろと話しながらやれるのはとっても楽しいですね。

――8月につくばで開催したワークショップにも参加されましたね。

西寺 これも娘から誘われて、二つ返事で「行く」って言いました。もう孫はそっちのけで(笑)、自分がやりたいから行かせてもらいました。この時は、紙から紙粘土をつくり、その紙粘土で作品をつくるというワークショップでした。つくるものは自由で、孫は好きなキャラクターや動物などをつくりましたが、自分は何をつくろうかと悩みました。動物とかには興味ないし、と。その時、「部屋に飾れる置物をつくろう」と思いついて、三日月と星を組み合わせたデザインを考えたのです。紙粘土が柔らかくてなかなか固まらなかったり、形が崩れたりして苦労しましたが、何とか作品にできました。

手を動かすことに集中できる魅力

――先ほど、刺繍もおやりになったと言われましたが、粘土の魅力はどういうところにあると思いますか?

西寺 刺繍は針を使うので、時々指に刺さって痛い思いをするんです。小さい子供がそばにいると危なくてできませんし。その点、粘土は簡単にできますよね。特別な準備など不要で、粘土さえあればあとは何も要りません。自宅のテーブルの上ですぐ始めることができます。お金もかかりませんし、片付けも楽です。私は体を動かすことが苦手なのですが、足に自信がなくなっても、耳が遠くなっても、家でできるのがいいと思います。それと、触っている時の感触がひんやりして気持ちいですね。あとは何といっても手を動かすことに集中できます。これが一番の魅力かもしれませんね。うまくできなくても「次はもっとうまくできるようになろう」って前向きに思えるんです。

――始めに、年齢的に情緒不安定にもなると言われましたが、気持ちの上でも効果がありますね?

西寺 はい、手を動かしている間は集中できるので、不安なことも忘れてイキイキできます。「次何をつくろうか」って楽しみができるようになるので、未来に希望が持てるようになる感じもしています。3回目のワークショップを楽しみにしているところです(笑)。

――ありがとうございました。

西寺 美幸 Miyuki Nishitera

茨城県つくば市在住。1948年生まれ。7歳の孫とともにワークショップに参加したことがきっかけで粘土遊びと出会う。粘土遊びを通じて孫とコミュニケーションできること、手を動かし夢中になることで不安が解消されることに惹かれ趣味として活動中。