連載 #14 「日本一の庭園美術館のはなし」

2024年9月2日

野村絵梨

第14回目のくらのむねんどうは、野村が担当します!
酷暑の8月もやっとそろそろ終わりですね。みなさまはどんな夏を過ごされたでしょうか。

さて私は先日ちょっと足を伸ばして、島根県にある足立美術館に行ってきました!前々から知っていて、一生に一度は行ってみたかった足立美術館。

1970年に実業家の足立全康が設立したこの美術館は、横山大観などの日本画コレクションと、非常に美しい日本庭園が特徴です。この庭園は国内外で有名で、アメリカの日本庭園専門誌「Sukiya Living Magagine : The Journal of Japanese Gardening」の「日本庭園ランキング」ではなんと21年連続日本一、フランスの「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」では三つ星に選ばれています!

日本で腕利きの、7人の精鋭の造園職人さんによって毎日手入れされている庭園は、ただ美しく整えられた庭というだけではありません。「庭園もまた美術品の一部である」という足立全康の理念に基づいて作られていて、美術館そのものが美術品と言えるほどの圧倒的なクオリティを保っています。

窓越しの庭園。手前の大木、中景の庭園、遠景の山々が見事に調和しています。

その中でも、特に私が目を惹かれたのは「白砂青松庭(はくさせいしょうてい)」でした。

「白砂青松庭」は、その名の通り、白砂と青々とした松の木が美しく配置された庭園で、まるで日本画の一部を切り取ったかのような風景が広がります。
実はこの庭、熱心な横山大観のコレクターであった足立全康が、横山大観作の「白砂青松」をモチーフに作らせた庭なのだそう。
庭の前に立つと大きな絵画の世界に包まれたような、なんとも言えない感動があります。
大観の頭の中にしか存在しなかった架空の日本庭園を、現実の世界に実現してしまった足立全康。あとからその経緯を知って、スケールの大きさに驚きました。

(作家としては、自分の作品の世界観をこんなに美しい形で現実に実現してくれる方がいたら、相当嬉しいだろうなあと思いました。)

「白砂青松庭」なだらかな白砂の丘にポツンポツンと生える松が印象的。

館内には、日本画の巨匠達の作品が多数展示されており、じっくりと鑑賞することができます。
庭園を見てから大観の絵画を観たのですが、木々や山々の表現の切り口に発見がありました。これは、ただ絵画を観るだけでは得られなかった体験だと思います。
詳しくはぜひ実物を観ていただきたいのですが、自然物だけではなく霧やモヤや雲などの実態のないもの、具体的に形や描写のないものの表現が見たことがないほど巧妙で、思わず「大観うっっっっま!!!!」と口走ってしまいました。

日本画を堪能した後はちょっと休憩しに館内のカフェへ。カフェからももちろん美しい日本庭園を眺めることができます。

カフェから見た池庭。大きなガラス張りの窓越しに、庭園を眺めてゆっくり食事やコーヒーを楽しむと、まるで絵画の中に包まれたような心地になります。手前には立派な鯉も泳いでいますね。

足立美術館は、単なる美術館という枠を超え、美術と自然が一体となった特別な空間です。季節によって四季折々の自然の変化が楽しめる庭園、私は次回雪の降っている頃に訪れたいなと思っています。

忙しい毎日から少し離れて、心を落ち着かせるために訪れてみるのも良いかもしれません。

ぜひぜひ、皆様も実際に訪れてみてくださいね!