4歳ころ、子どもが粘土に向きあうすがたは真剣で深くなっていきます。乗って足裏で土の感触をじっと味わうように動かずにいたり、ボクシングするように粘土をなぐったり、お前は何者?と粘土に問いかけ対話しているように感じられたり、何かを引っぱりだそうとするように粘土をグイグイつかみ、ひねり、ねじったり。試行錯誤の連続で、素材を理解する力がめざましく成長します。
粘土の性質とよく似ているものに「ゴム」があります。ゴムと粘土を比べて、粘土素材の特性をよりはっきりさせましょう。
ここが共通点
「可塑性」:ゴムも粘土も、引っぱったり伸ばしたりねじったり形が自由になります。これは可塑性があるためです。
「粘着性」:ゴムや粘土を、あるていど引っぱってもちぎれないのは粘りがあるからです。これが粘着性です。輪ゴムがブツブツ切れてしまうのは古くなって粘着性が失われたためで、復活しません。粘土がボソボソになるのは水分が蒸発して粘着性がなくなったから。でも水を加えてこねると粘着性が復活するので、粘土は何回でも、半永久的に使うことができます。
どこが違う?
「固着性」:ゴムをうんと伸ばして手を離した瞬間、パチンと縮んで元に戻ってしまいます。でも粘土の場合、手を離したら、粘土が縮んでしまうことはありません。引っぱりだした粘土が、かたまりの中に戻った、引っ込んでしまったなんてありえません。つまり、粘土には形がそのまま残る、固着性の性質があります。これが大切なポイントです。
子どもたちは粘土と遊びながらついに「ひねり出し」技法を獲得します。具体的には、粘土かたまりの一部をグイとつかんで引っぱりだすと、ドアノブのようにコブ状の形になることをいいます。
この「ひねり出し」が重要なのは、可塑性、粘着性、固着性という素材のオリジナリティを理解したのちにはじめてできる、粘土でなくてはあらわれない技法と形だから。他の造形ではありえません。新種の蝶や花、魚を発見したのと同じくらい画期的なできごとです。立体造形の発達上、素材を理解した指標となるこの技法がでると、思わず拍手喝采してしまいます。粘土は飛んだり咲いたり泳いだりしませんし、子ども本人も気がつきませんがまちがいなく新発見の技法ですから、これができたときわたしはすごく褒めてあげます。
この技法を獲得すると、子どもは粘土を思いのまま操り、使いこなせるようになるので、より複雑で魅力的な、生き生きとした立体作品が生まれます。その成果が作品にはっきりとあらわれてくるのは5歳ころで、わたしにとって驚きの作品の連続です。